勉強会を設計することについて考える
個人的な興味で始めた勉強会(と輪読会)が、9ヶ月くらい経ったので、書いてみたいなと思いました。
勉強会を始める上で自分が大切にしていること、それをどう実現をするかという、設計について少しでも言語化できたらと思います。
動機:楽しかった、面白かった、という感想の背後が知りたい
今まで、社内外で輪読会を開いていきましたが、結構突発的にやっていました。
極論、「人が集まればなんとかなる」と考え、ざっくりなやり方とタイムテーブルを共有するくらいの開き方をしていました。
これについて違和感に覚えたのが、勉強会に対しての感想でした。
この手の勉強会を開いてみて言われる一番多い言葉が「楽しかった」「面白かった」「学びがあった」といった感想です。
この言葉が出てくるのはとても嬉しい反面、個人的にはさらに、その背後の内容を知りたいなと思ったのです。
- 「楽しかった」を例で上げると、
- → 自分の知らないことを知れたのが楽しかった? 具体的にどういう部分が?
- → それとも会の進め方とかやり方が楽しかったのか?
これは私自身もよくある経験ですが、口では「楽しかった」と言っておきながら、「具体的にどこが楽しかったんですか?」と訊かれると、答えに窮することがあります。
それは私自身が感覚としては間違いなく「楽しかった」と抽象的に言うことはできるのだけど、そこを具体的に喋るほど言語化できていませんでした。
私自身、こういった言語化は大事にしていきたいし、せっかく勉強会に参加してくれた人にも、出来ればより言語化に挑戦して欲しいと感じました。そして、良ければ深堀りして言語化した内容をまた聞いて、自分の学びのきっかけにしていきたい。
勉強会を開く目的を明確にする
現在やっている勉強会では、以下の目的を掲げています。
終わったときにどういう状態になっていたいかを考える
勉強会を開いた目的を達成できたと検証する為に、勉強会が終わった後にどうなっていたいかを想像してみます。
モデリング会を最初に開催したときは、モデリングをして簡単な実装に落とすまでのことを3時間くらいでやりましたが、「時間が足りない! もうちょっとやりたいなー…」という感想が出てきたら成功としていました。
似たような感想はふりかえりのタイミングで出てきてたので、成功だったと思います。
その時の模様は以下の記事にも纏めています。
言語化をするタイミングと手段を作る
モデリング会を始める時に考えていたのが、「自身を含めた参加者の言語化をどう促進するか」でした。
一番はじめに書いた「楽しかった」「面白かった」から、さらにもう一歩踏み込んだ感想や気づきを言語化するにはどうしたらいいかと考え、
必要なのは言語化するタイミングと手段を決めることだと思いました。
勉強会の途中や終わり間際に5〜10分ほど設け、「今日の学びを、3ツイートでこのハッシュタグに書いてね」という「3ツイ・ルール」を設けました。*1
勉強会で学んで突っ走っている状態を一旦止めて、「今、学んだことはなんでしょうか」と問いかけることにより、自身がいま何を学んだのかを言語化して貰うよう促していきました。
感覚値ですが、これは結構効果があったと思っています。
最近では特に促さなくてもみんな学びをより言語化しています。
- SNSというパブリックな場で自分の学びを発言することに抵抗を減らす(自分も含め)
- みんなの学びがハッシュタグ上で閲覧しやすくなる
- → 誰かの学びを見て、自分の学びのきっかけが生まれやすくなる
- 3ツイートくらいなら、そこまで抵抗なく言語化できるのではないかという仮説
- → ブログ書いてくれー! はかなり心理的ハードルが高いと思える
あと一番大事なのが、自らが一番に書く人(アイスブレーカー)になることです。
SNS、ブログはもちろん、たとえ勉強会用だけに立てたクローズドなチャットでも、一番初めに何かを書く、というのはとても勇気のいることです。
その心理的負担を減らして、後に続きやすくするためにも、まずは自分が率先して感想・気づきを書いていくのが重要だと思います。
逆に他の人がアイスブレーカーになった場合は、その人を褒め称えることが大事です。
失敗しても良い環境 → 率先して失敗をする場を作る
これは元から狙ったわけではなく、偶発的に生まれて言語化していったものですが、
「せっかくの勉強会だから、自分が普段やらないような実装をやってみよう」
「積極的に選んでやった結果、失敗しても良い。なぜなら勉強会なのだから」
といった勉強会の掟を参加者と合意の元、定めることにしました。
ちょうどこの間も勉強会中、大きな失敗をしたところです。
これについて、チャット勢(Discordのボイチャで話すのではなく、チャットで緩く発言してくれる参加者)から、「うまく行かなかった時にしか学べない」という意見が上がりましたが、まったくもってその通りだなと思います。
人間、つまづいた時にこそ、失敗した理由を認知できるので、やりすぎてみて、これは失敗だったな、と気づいてから軌道修正をする。
でも現場だとそう何度も失敗はしていられないので、勉強会の場でこそ率先して間違うくらいの気概で臨むようにする、と位置づけました。
これによって、今までやったことのないやり方へチャレンジするハードルがだいぶ下がったように思えます。
こちらの記事にも簡単に纏めています。
コミュニティというオープンな場で勉強会をする
私がいま開催している勉強会の2つはどちらも、DDD-Community-jpというコミュニティの場で行っています。
ここでワイガヤやっていると、気になった人がボイチャに参加してROM専してくれたり、チャットで反応してくれたりします。
そういった人たちを無視するわけでもなく、出来る限りはチャットでの会話にも挨拶を返したり、反応したりするようにしています。
「ラジオスタイル」と私達の中では言っていますが、チャットにコメントした内容をボイチャで喋っている人が、お手紙を読むパーソナリティのように拾っていくと、チャットだけでコメントしている人たちも「参加している感」がすごく出てきます。
あ、自分も飛び入りだけど参加していいやつなんだ、と思って貰えやすい。
そういったことをやっているので、最近では「新しく来る人へのハードルが低い」「ファシリが手厚い」など言って頂けるようになったのかもしれません。
一見大変そうにも見えますけど、これをやることによってコミュニティにいる有識者の方々が適度な距離感でアドバイスを投げてくれるので、大変ありがたかったりします。
参加者が参加しやすい空気を作る
これは最近始めたエヴァンス本輪読会で実践していることです。
この輪読会では、ボイチャでも議論に参加OKだし、テキストのみの参加もOK。なんだったらROM専でもOK。としています。
オフラインの勉強会でもそうですが、勉強会に行くと大抵はみんな知らない人です。その中で自分の考えを喋ったり、コメントしたりするのってなかなか勇気のいることです。*2
という考えのもと、まずは声を出す、チャットにコメントをする、リアクションを付けるという練習を行います。
「こんにちはー」って言って「こんにちはー」って返してもらう。コール&レスポンスです。
やはり最初の一歩というのはなかなか遠いものです。
ですが、そのハードルさえ超えてしまえば、あとは自ずと発言へのハードルが低くなっていきます。
チャットや音声での議論が増えて、開催する側としてもテンションが上がるのも、嬉しいところですね。
また、対等な議論を行えるようにする、という意味ではグランドルールの共有も行いました。
- 参加者は毎回任意 - 今回は不参加、次回は参加をするといった気軽な感じ - 途中参加も断然OK! まずは聞くだけでも大丈夫です! - フィードバックを恐れない - マサカリは怖いと思いますが、アウトプットからのフィードバックを受け、学びを深めていきましょう - アウトプット7割:インプット3割の気持ちで臨みましょう! - 経験の有る無しは気にしない - 自分はDDD非経験者だから……と気後れする必要はないです - 堂々と意見や疑問を語りましょう
まとめ
最初から狙っていた、偶発的に生まれたという違いはありましたが、今は以下のことを大事にしています。
- 学びに対する言語化を意識する
- テキストのみ、ROM専OKなどのオンライン参加のハードルを下げる
- 失敗しても良いと明言し、チャレンジへのハードルを下げる
この記事を書いていて、ラーニング・パターンの学びの共同体をつくることに近いことをやっていると思いました。
一人で学ぶには限界があるので、みんなで学べる場を作りたい。
なので参加者みんなが有意義に意見を交わせるよう、参加へのハードルを極力減らしたり、学びの言語化を重視するのだと思いました。